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撤退する決断をさまたげる「サンクコスト」

日本政府が9月21日に原子力関係閣僚会議を開き、高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉を含めた抜本的な見直しを行い、年内に結論を出す方針を発表しました。

これまで22年という歳月と、1兆円を超える事業費を投入してきた「もんじゅ」。
これまでなかなか「廃炉」という決断が出来なかったのはなぜなのか?
「サンクコスト」という考え方について、お伝えしたいと思います。

個人でも組織でも、いったん始めたことを止める決断を行うのは、とても難しいものがあります。
これまで労力、時間、お金をかけてきたことが無駄になる。
先人たちがやってきたことを、自分の代で終わりにするのは心苦しい。
「感情」が、撤退する決断をさまたげるのです。

「サンクコスト」とは、事業や行為に投じたお金のうち、撤退しても戻ってこないお金のことを指します。
「もんじゅ」の例では、すでに投下した1兆円がこれにあたります。

報道によると、「もんじゅ」を廃炉にするには、30年の時間と3000億円の追加費用がかかるそうです。
一方で、再稼働させるには5800億円の追加費用がかかるそうです。
そして、年間200億円の維持費がかかります。
一から原子炉を作り直すのなら、再稼働させた方がよさそうにも「一目」感じます。

想像がつきにくい話ですので、身近な話に置き換えてみます。

あなたが、ある映画を見ようと思って映画館に行きました。120分の映画です。
1800円でチケットを購入し、入館して。
見始めて10分経ったところで、「つまらない」と感じたときに。
あなたは、映画館を出ますか?ずっと見続けますか?

どちらにしても、すでに支払った1800円は戻ってきません。
「もったいないから見続ける」というのは、サンクコストに縛られているから。
「つまらない映画を見るより、110分を別のことに使う」ということの方が合理的な考え方のはずなのに。
「1800円がもったいない」という感情が、映画館を出る決断をさまたげます。

では、1500円で買った前売り券を、映画館に入るときに無くしてしまったことに気づいたときにはどうなのか?
合理的に考えると、当日券1800円の価値がある映画を見るかどうかを考えることになるはずなのですが。
失くしてしまった1500円+当日券1800円=3300円の価値があるかどうか?という判断基準になってしまいがちです。

この感じ方が、株式投資で損切りできずにズルズルと損失を重ねる心理につながります。
そして、意外にも高学歴の男性ほど、サンクコストに囚われる傾向にあります。

どうやっても戻ってこないお金に未練を感じるのは、人間の性(さが)。
でも、撤退を考えるときには、合理的に数字で考えることの大切さをお伝えしています。

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