【企業事例】三菱自動車の燃費不正問題に観る「経営理念は企業の決断の軸」

経営理念を掲げている企業は、たくさんあります。
経営理念は、創業者が事業を起こすにあたっての想いを掲げたもの。
社内に掲示したり、朝礼などで唱和したりして、従業員に広める企業も多いでしょう。
そして、従業員が経営上、仕事上で行動する時の、拠り所となるものです。
これを私は、「決断の軸」と申し上げております。

では、三菱グループと三菱自動車の経営理念について 見てみましょう。

・三菱グループの「三綱領」

所期奉公=期するところは社会への貢献
事業を通じ、物心共に豊かな社会の実現に努力すると同時に、かけがえのない地球環境の維持にも貢献する。

処事光明=フェアープレイに徹する
公明正大で品格のある行動を旨とし、活動の公開性、透明性を堅持する。

立業貿易=グローバルな視野で
全世界的、宇宙的視野に立脚した事業展開を図る。

・三菱自動車の企業理念(2005年1月制定)

大切なお客様と社会のために、走る歓びと確かな安心を、こだわりをもって、提供し続けます。

さすが三菱グループ!という、立派な経営理念ですね。

経営理念とは、作って終わり、掲げておしまい ではありません。
実際の行動が伴ってこそ、本当に生きてくるものです。

今回の不正の背景には、燃費を巡る厳しい競争があったようです。
達成困難な目標と、なかなかうまくいかない現実とのはざまで、現場が追い詰められていたことは 想像に難くありません。
でも、だからと言って試験で不正をしていいわけではありませんし。
ここで踏みとどまるために、経営理念が拠り所となるのです。

売上や利益の目標達成、ライバルに勝つ、自分の処遇、処罰などなど。
ギリギリの状況で決断を迫られた時に、どうすればいいのか?
こうした従業員の迷いを吹っ切るには、経営理念に沿った行動を取ればいいのだと。
そうした社風、組織風土、人間関係ができていないと、経営理念は絵に描いた餅でしかありません。

そして、経営理念は企業における「決断の軸」になるだけではありません。
「お客様が集まる軸」にもなるのです。

三菱重工相談役・相川賢太郎氏が「誰も燃費なんて気にしていない」という放言もしたようですが、「それを言っちゃぁ おしまいよ」ですね。
http://news.livedoor.com/article/detail/11458841/
それならば、消費者は何を信用して車を選べばいいのでしょう?

「あの会社の経営理念は、立派だ」
「社長も従業員も、経営理念に沿った行動をしている」
「だったら、商品やサービスも間違いないものだろう」
「では、信用して買ってみよう、取引してみよう」
こうしてお客様が集まるのでは、ないでしょうか?
商品やサービスが間違いのないものであることが前提で、経営理念に沿った行動がお客様の信頼と購買行動に結びつくのです。

今回の事件、とても残念に想います。
ギリギリの状況下の決断において、企業や個人のホンネがあらわれます。
立派な経営理念を掲げた大企業が、その実践ができていなかったこと。
15年前のリコール隠し問題の教訓が、活かされていなかったこと。

三菱自動車の株価は、この問題を受けて半値にまで下がりました。
世間が深刻に受け止めている、なによりの証拠ではないでしょうか。