【政治事例】2016年台湾総統選挙に見る、国民の決断

台湾というと「親日国」のイメージが強いですね。
韓国や中国が反日一辺倒なのに対し、一歩引いたかたちで日本のことを見守っています。
東日本大震災では多くの義捐金を寄せていただいたことでも知られています。

でも、私たちが台湾についてあまり詳しくないのも事実です。
台湾は、清朝によって大陸支配に組み入れられるまでは、原住民が居住していました。
その後、日清戦争で日本の統治下におかれ、多くの人材や資金が投じられたことから台湾の発展の基礎が築かれます。

太平洋戦争後は、国民党(中華民国)が日本から支配権を引き継ぎます。
その後、国共内戦が激しくなり、大陸では1949年に中華人民共和国が建国されます。
国民党の首脳部は台湾に逃れてきて、中華民国は、台湾と周辺の島々のみを支配するだけになってしまいます。

台湾には、大きく2つの政治勢力があります。
国民党は、大陸から逃れてきた人々とその子孫が中心。
長期的な視野では大陸との統一を主張しています。
共産党主導の統一には反発を示しており、短期的な視野では現状維持を志向しています。
現政権は、国民党の朱立倫主席が首班です。

民進党は、1986年に政党結成が合法化されて誕生した野党。
台湾の独立維持を志向しています。

今回の総統選では、独立志向の野党・民進党の蔡英文主席(59)が与党・国民党の朱立倫主席(54)、親民党の宋楚瑜主席(73)を大差で破り、当選しました。
中央選挙委員会の集計では、蔡氏の得票率は56・12%の圧勝。
これによって8年ぶりの政権交代が起こります。
民進党は、同時にあった立法院(定数113)選で68議席を得て初めて過半数となりました。

「ひとつの中国」を巡って、中華人民共和国(中国)と中華民国(台湾)は、長らく対立を続けてきました。時には戦火を交えることもありました。
中華人民共和国は「武力解放」も辞さない姿勢から、近年は態度を軟化させてきました。
それが、昨年11月に1949年の中華人民共和国建国後初めてとなる、中国と台湾の首脳会談になりました。

では、台湾の人々は、自分たちのことをどのように考えているのでしょう?
世論調査では、60%が台湾人、5%が中国人、35%が台湾人かつ中国人と答えています。
民族的には中華民族だが、国民としては台湾だというところでしょうか。

台湾の人々には、自分たちで民主主義国家を作り、経済を発展させてきた誇りがあります。
この8年間の国民党政権は、経済面での大陸進出を後押しするとともに、政治的な対立を和らげようとしてきました。
中国共産党が主張する「ひとつの中国」論に直接は組しないものの、対話には応じてきました。

50年間の「1国2制度」ということで1997年にイギリスから中国に返還された香港。
その政治的動きを、台湾はじっとみつめています。
中国でいわゆる「人権派」と呼ばれる、政治的自由を求める人々への共産党の対応姿勢にも注目しています。

そして、今回の選挙結果。
経済交流はともかく、政治的自由だけは手放せない!と考える人が多かったことが伺えます。
南シナ海での覇権的な動きを活発化させる中国。
台湾のことは、台湾で決める!という国民の意思を感じた次第です。