組織における合意形成と意思決定

組織における合意形成と意思決定の関係について、整理してみます。

民主主義に慣れた人々であれば、合意形成をまず行って、参加者の意見を集約してから意思決定が行われると思われがちですが。
実は、合意形成と意思決定は、全くの別物です。

何もないところから、合意を積み上げることは普通はありません。
誰かが「これをやろう!」と意思決定したものを、全体の討議にかけて合意形成を行うのです。
意思決定者が最終決定権を持っていないから、あるいは全体の討議を経ることで実行が容易になるから、より広範な支持を得るため、いいアイデアを取り込むために、合意形成を行うのです。

トップの意思が下部組織にまですぐに徹底される組織では、トップの意思決定で組織が動きます。
ここには、合意形成は必要ありません。
トップが決めたことを、粛々と実行するように、組織が動きます。

誰でも、自分の意見を聞いてほしい、意見を組織的な意思決定に反映して欲しいという欲求があります。
現場で起こっている事実、困っていることを、全体でなんとか解決してほしいと思うものです。
ですが、現場積み上げ型の意思決定では、イノベーションは起こりません。
改革案というより、改善案に近い意思決定がなされがちです。

イノベーションを起こすには、リスクを取りながらも組織全体の将来を見据えた意思決定が必要です。
それは、往々にして合意形成とは無縁なものになります。
合意形成は、重視すればするほど時間がかかります。
組織全体の合意を得られないアイデアは、実行にあたって協力が得られにくい傾向があります。
このバランスを考えながら、合意形成というステップを踏むのか、さっさと意思決定してしまうのかを判断する必要があると思います。