【コラム】70歳を過ぎても大企業で働いている人の事例

あなたは、今いる会社で長く働きたいと思いますか?

人生100年時代と言われますが、一方では45歳定年制という言葉が言われるようになりました。
大企業でも、黒字なのにリストラするのが常態化し、「働かないおじさん」が槍玉に上げられるようになりました。
誰でも、毎年1つ歳をとるのですけどね。
そして、いずれは45歳、50歳、60歳となるのですけどね。
相手のことを非難しても、何も変わらないと思うのです。

私の知り合いで、70歳を過ぎてもパナソニックで嘱託として働いている方がいらっしゃいます。
社長よりも年上です!
中小企業であれば珍しくないかもしれませんが、大企業だと60歳定年、65歳まで再雇用が一般的ですので、異例とも言えます。

この方(Tさん)とは、2004年に知り合いました。
高校を卒業して、半導体事業で営業マンとして働き始めます。
2000年頃は、DVDが世に出始めた時代。
営業課長として、営業部門で一番大きな売上の部門を任されていました。
当然、Tさんは意気揚々として働いていました。

ところが、2004年4月の人事異動で、Tさんは営業課長のポストを外されます。
営業会議で組織表を配られた時に、自分の名前が見当たらないことに愕然としたそうです。
Tさんはこの時54歳。まだ役職定年制が導入されていない時でした。
必死になって自分の名前を探したところ、営業部長付けのところに見出したのでした。

Tさんは、当然面白くありません・・・
会社に行くのも嫌になりましたが、それでもなんとか頑張っていました。
そんな時に、私と出会ったのです。

ちょうどその頃は、パナソニック半導体部門ではお客様からさまざまな半導体調達方法についての業務改革要望が押し寄せてきていました。
私は経理部門に所属していながらも、プロジェクト的に業務改革を複数掛け持ちしていました。
そこで、Tさんの営業についての知識、そして高いコミュニケーション能力、謙虚な姿勢が素晴らしいと思い、一緒に業務改革プロジェクトに取り組むことを提案したのです。

それまでは単純にお客様から受注して、製造、納品するスタイルだったものを。
お客様の工場横の倉庫に「預け在庫」する方式や、日本の事業部門本部同士で受発注を行い、製造と納品は海外の子会社同士で行うなどの、先進的な取り組みを、社内外の関係者を巻き込んで実現しました。
本社に足を運んで決裁を取得したり、IT化が必要な場合は業務の洗い出しと要件定義まで行いました。
こうして、Tさんにはものすごい量と質のノウハウが貯まっていったのです。

Tさんは、2010年に60歳で定年退職となりました。
市役所の嘱託として、駐輪場の管理人をしていたそうです。
半年ほど経ったある日、パナソニックの調達部門から、「Tさんの経験を、ぜひ若手に引き継いでほしい。週3日でいいので、嘱託として相談に乗ってほしい:というオファーがありました。
自分が所属していた組織ではなく、別の部署から一緒に働いていてTさんの知見や人間性が評価されたのです。

Tさんは、聞かれたら教える、困っていたら声をかける、というスタイルで後輩の育成やサポートに取り組んでおられます。
私が一緒に仕事をしていた頃の係長は、今では立派な部長になられています。
その部長を陰で支えているので、みんなから信頼されています。
私と一緒に導入したITシステムが更新の時期を迎え、「誕生から最後まで見守ることができて、とても幸せだ」とおっしゃっていました。

Tさんの事例は、稀有なものかもしれません。
役職を外されてふて腐るのではなく。
自分の知識や経験を、異分野の人とタッグを組んで、組織改革に生かすことができれば。
そして、その働きぶりが認められれば。
貴重な人財として、一般的な定年とは誓った働き方ができる時代になりつつあるようですね。


■長く働くことができるスキルを学ぶ「高島塾」の開催スケジュールはこちら