【企業事例】マクドナルドに欠けている「組織としての実行力」

マクドナルドが苦しんでいます。

 また異物が混入して。
 しかも、複数の店、複数のメニューで。
 怪我をした子供も出ているようです。

 昨年の夏のチキンナゲットの肉事件は、悪意ある中國業者の問題でした。
 年末のフライドポテト品薄事件は、アメリカ業者の供給力不足の問題でした。
 

 「利は元にあり」
 言葉を思い出しました。
 ビジネスの利益は仕入にある。だから取引先との関係をきちんとしなさい、という
 意味です。
 単純に、買い叩いて儲ければいい、という意味ではありません。

  従業員マニュアルがあれほど整備されているマクドナルドです。
 仕入先には、品質だけはきちんと守るように徹底しているはずですが。
 実際のところは、価格重視でコストダウンを押し付けているのでは?というのが、
 事件の背景から透けて見えます。
 まさに、仕入先がマクドナルドの信用と業績を失墜させています。

  現在のマクドナルドは、社長が決断したことが組織としてきちんと実行できて
 いないと感じています。
 サラ・カサノバ社長は、就任以来いろんな経営施策を打ち出しました。
 施策の是非はともかく、本社の社員はもちろんのこと 店頭スタッフに至るまで
 組織としての実行力が欠けています。
 本音と建て前、利益と安心安全が、ごちゃごちゃになっているのです。

  決断力というと、すぐに社長の資質に目や矛先が向かいます。
 今回の記者会見でも、社長は顔を見せませんでした。
 これは、リスクマネジメントだけでなく 社員やスタッフ、店舗や顧客の信用を
 つなぎとめるという点でマイナスだったことは明らかです。
 でも、社長が記者会見したからと言って、事態が好転するわけではありません。

  ビジネスは決断して実行してワンサイクル、というのが 私の持論です。
 現在のマクドナルドは、社長の決断を 組織として実行できていません。
 ここをあらためないと、業績回復のメドが建たないのです。

 
  大事に直面した時には、何か強い後ろ盾があってこそ勇気も出ます。
 松下幸之助も、昭和39年(1964年)に熱海会談を開催しました。
 業績が急低下し、当時の代理店と4日間にわたってホテルに泊まりこんで話し合い、
 その結果 お互いに力を合わせて困難に立ち向かう合意をしたのです。

  松下電器の基本方針は変わっていないのに、間違いが出た原因はどこにあるのかを
 考えた時、基本方針を現実にうつし、それを代理店に達する過程に間違いが起こって
 いると、幸之助は考えました。
 そして、自らにも非があることを認め、代理店も松下電器を責めることをやめました。
 商売の基本に立ち返って、お互いに努力することを誓い合ったのです。

  マクドナルドがこれだけ大を成したのは、立派な経営理念があればこそです。
 ところが、利益優先・自社優先になってしまい。
 社長の決断が、社内に伝えられる時、店舗に伝えられる時に、本音と建て前で混乱が
 起こっていると思います。

  人材教育・評価と、経営のしくみを、原点に立ち返ってあらためること。
 まさにこのことを決断し、組織として実行する。
 マクドナルドの再生は、ここからスタートするのです。