「選択と集中」の決断力

電機メーカーの経営不振が、事業戦略としての「選択と集中」の失敗として取り上げられることが増えていますね。
これって、本当なのでしょうか。

「選択と集中」という戦略自体は、弱者の戦略としては正しいと思うのです。
ランチェスター戦略にもあるとおり、弱者とは経営資源が少ないもの。
得意分野に集中特化することで、強者を打ち破ることができるのです。

個人の投資行動でも、分散投資を勧める記事がたまに見受けられますが。
資産が少ない人は、分散投資していては資産が増えません。
分散投資ができるのは、金持ちだけ。資産を減らさないようにするのが目的です。

「選択と集中」の決断力で大切なことは、数字の裏付けをきちんと持つことです。
集中するということは、成果を大きくすることが目的なのですが。
その一方で、失敗した時のリスクが大きくなることでもあります。
リスクマネジメントが、分散投資の時よりも厳しく求められるのです。

振り返って考えると、電機メーカーのリスク管理は適切だったのか。
この問題に行き着くと思うのです。

シャープは、売上高3兆円の企業なのに、4000億円を投じて堺工場を建設し、借入金残高は1兆円に。
パナソニックは、ほかの事業の厚みがあるとはいえ、プラズマや液晶に累計1兆円近い投資を行い、借入金残高が1兆円に。
ソニーは、サムソンとの合弁の液晶会社を手放し、携帯電話会社を買収し。
大規模投資を借入金で行い、その返済に四苦八苦しているのが苦境の根本にあります。

借入金で事業を行うと言うことは、それだけ事業リスクを見極めることが大切になります。
一発逆転の戦略は夢がありますが、したたかに現実を見て、リスクを管理することが大切です。

「選択と集中」自体は正しいことでも。
その裏付けとなる数字の見極め、リスク管理が伴ってこその戦略です。
希望的観測をできるだけ排除し、いざとなったら撤退する基準すら考えておくこと。
これが、「選択と集中」の決断力なのです。