蓮舫氏にみる「何を言ったか」より「誰が言ったか」

 2016年9月の民主党代表選挙。

選挙戦は、早くから立候補を表明していた蓮舫氏に有利な状況で進みました。
発信力があること、初の女性候補であること、知名度があること。
東京都知事に小池氏が選ばれたことも、状況が有利に展開する要因だったと思います。

 でも、蓮舫氏が台湾と日本の二重国籍者ではないのか?という疑惑が浮上すると。
政策論争よりも、「権力の正統性」の議論が噴出しました。

 政治家は、ギリギリの決断を迫られる場合を想定しておかなければなりません。
権力を行使するにあたっては、その理由もさることながら、なぜあなたが行使する
ことができるのか?を説明しなければいけません。

 二重国籍だと、どういう不都合が起こるのか?
ギリギリの時に、日本のことよりも他国のことを優先するのでは?という疑念を
権力を行使される国民の側が払拭できないからです。
「何を言ったか」よりも、「誰が言ったか」が、問われるのです。

 大河ドラマ「真田丸」でも、これから描かれるであろうエピソードです。
関ヶ原の戦いの後、紀州九度山に蟄居させられた真田父子。
やがてきたるであろう徳川と豊臣の最後の決戦の戦略を話し合います。

 息子 信繁(幸村)が立てた戦略を、父 昌幸は「見事な戦略だ」と褒めます。
でも、その戦略は採用されないだろう、とも言うのです。
信繁にしてみれば、いい戦略なのになぜ採用されないのか?という疑問が残ります。

 昌幸いわく。
「わしがこの戦略を献策すれば、人々は「上田城で2回も徳川軍を破った実績が
ある真田殿の言うことなら」と話を聞いてくれるであろう。だがお前には実績が
無い。そこで人々は疑念が生じ、お前の言うことは取り上げられないだろう」と。
それが、人々の本音だというのです。

 今回の代表選の結果を見ても。
当日投票となった国会議員・次回国政選挙立候補者の票は、蓮舫氏と前原氏+
玉木氏の票とほぼ互角でした。
「勝ち馬に乗る」のが国会議員の性(さが)ですので、事前の大優勢から大きく変化
したことがうかがえます。

 国会議員でありながら、野党第一党で総理大臣にもなろうかという人物が、
国籍という基本的かつ個人的な事柄に適切に対応できないのであれば。
この人に大きな権力を与えても大丈夫だろうか?
ギリギリの状況で、きちんとした決断ができるのか?
こうした疑念が生じたからだと思います。

 最近はネットでいろんな人の発言を簡単に閲覧することができます。
そのときでも、「何を言ったか」よりも、「誰が言ったか」が、判断材料になります。
専門家以外の発言が受け入れられにくくなるのは、「正統性」を問われるから。

 相手に決断を促すには、発言内容もさることながら、あなた自身の「正統性」が
問われていることにもご注意いただきますよう。