【政治事例】直接民主制の限界を見た2016年

日本人は、「直接民主制」と言うと、良いイメージやあこがれを持つ方が多いと思います。
国家元首や首相を直接選ぶことができることは、素晴らしい!
ほんとうにそうなのか?と思えることが、今年はあまりにも多すぎました。

 イギリスでは、EU離脱のコストの多さと影響の広がりに動揺が走り。
イタリアでは長期低迷の原因を、政治制度ではなく、移民の増加やEUの縛り付けに求める「五つ星運動」が勢力を伸ばし。
コロンビアでは、左翼ゲリラとの50年にわたる内戦すら、ゲリラに甘いと合意を否決しました。

 ドゥテルテ大統領やトランプ大統領候補の過激な発言は、先進国に暮らす多くの人々の眉をひそめさせました。
でも熱烈な支持者にとっては、彼らはヒーロー。困難な状況を打ち破る英雄として国家のかじ取りを任されました。

 みんな日常生活で忙しいのが、現代社会。
将来のこと、専門外のことは、避けたいと思います。
しかも、様々な事情が絡み合って、複雑な問題が多いうえに。
私たちは、面倒なことを本能的に避ける傾向があります。
その結果、理屈で考えたらわかりそうなことまで、感情で決めてしまいます。

 これからロシアとの間で、北方領土変換、日露平和条約締結に向けた会談が行われます。
日本人としては、「北方領土の4島一括即時無条件返還」が悲願ではありますが。
ロシアにも事情があり、日本の言い分をすべて受け入れてくれるとは限りません。
引き換えとなる経済協力や、2島だけの返還、更なる先延ばしなど。
Yes、Noだけで決断するには、とても複雑です。
どういう交渉結果になるにせよ、仮に国民投票にかけるとすれば、Noとなる可能性が高いことが予想されます。

 国民全員が同じ知識と理解力、影響への洞察力を持っているとは限りません。
議会制民主主義の良いところは、知識や情報をより多く持った人々が議論して決断できるところ。
一時的な感情を排す、議論や交渉のステップを踏む、より的確な情報を集めるなど。
合理的な意思決定ができる状況を、作り出すことができます。

 最近は何事もわかりやすさが優先され、妙なレッテル貼りがなされることも多いです。
戦争法案、年金カット法案、カジノ法案などなど。
確かに一面の真実ではあるでしょうけれど、全体像やほかとの関連性を無視して、切り取った一面だけを強調するのは、国民の感情をあおるだけで、冷静な判断から遠ざけてしまいます。

 そこで、「3つの見る」をお勧めしたいと思います。
結果だけを見ずに、プロセスも見る。
その問題の背景を、きちんと見る。
その決断の影響を、できるだけ長い時間、広い範囲で見る

 そして、政治家には権限を委任しつつ 監視と支援を行う。
大きな問題ほど、一時的な感情、近視眼的な対応をしては、事を誤ってしまいます。