現場現物主義こそが、人を動かす

私が松下電器の社内コンサルタントとして実践してきたこと。
現場現物主義です。

私は、工場や倉庫の現場が大好きです。
帳簿の上の数字ではわからない、リアルな現実がありますから。

帳簿上は品番、単価、数量が記載された在庫でも。
それがどのような状態で保管されているのかは、現場を見ないとわかりません。
ほこりをかぶっているだけならまだしも、不良品になっている場合もあります。

ある時、私がテレビ工場の近くにある半導体倉庫を訪れました。
帳簿上存在している在庫が、どのような状態だったのか。
11年前の出荷日が記載されたものが、山積みになっていました!

しかも、同じ日付で小さな梱包が何個もあったのです。
1000個入りの小箱を5000個入りの大箱に詰めるのが正式梱包なのですが。
2000個、3000個、4000個だけ入れて、あとは緩衝材が入っていたのです。

これは、テレビの製造ラインが4つあり、それぞれのライン在庫が一定量を下回ると自動発注される仕組みだったのです。
それを、バッチ処理で注文を丸めるプロセスが無く、4ラインから注文が出るたびに別の注文と認識して生産、梱包作業を指示していたからです。

もちろん私は、このことを同行していた営業マンに指示して営業課長に報告させるとともに。
経理責任者、IT部門責任者、生産管理責任者に写真入りでレポートしました。
誰が悪いという責任追及ではなく、事実を正確に記述して、改善提案を付けてのレポートです。

経営の良し悪しは、工場と倉庫を見ればすぐにわかります。
運営のまずさは、すぐに日々のコストとして反映されますから。

現場に足を運ぶだけでなく、チェックポイントをきちんと把握していないと。
単なる「物見遊山」と変わりません。

私が現場を動かすコンサルタントとして一目置かれていたのは。
帳簿だけでなく、問題点を正確に見抜いて改善案までレポートできたから。
「人を動かす」ことで、きちんと収益改善に結びつけることができたからなのです。